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この文章は?  この文章は、97年1月15日、坂本龍一のコンサートツアー「f」の公式メーリングリス「f_fan」トに投稿したメールを再編集したものです。言い回しなどを若干書き換えていますが、基本的な内容は当時のままです。

ロレンツォ、本に書いてあることを間に受けて佐渡裕に会いに行く

Date : 15 Jan 1997 22:37:23 +09:00

 ロレンツォ@まだ興奮している

 「f」@大阪を聴いてたまらなく佐渡さんの演奏を聴きたくなったところへ、f_fanで佐渡さんのスタッフから

> 1月15日 大阪センチュリー交響楽団演奏会(ザ・シンフォニーホール)

という情報を教えてもらったのですぐに「行く」と決めたのですが、昨日シンフォニーホールに電話したら「満席です。当日券もありません」と言われました。でもどうしても聴きたかったので、だめなら押し入ってでも入ってしまえと(おいおい)決意して開演時間も曲目も知らないまま行って来ました。

 開演は夜だろうから下見でも、と思って会場に着いたのが午後3時ジャスト。楽屋口を確認して表に回ると玄関からトランシーバを持った係員が素早く飛び出してきて職務質問される(^^;

 係「お待ちあわせですか?」

 ロ「いや、佐渡裕さんが出ると聞いたのだが満席だと言われた。でもどうしても入りたくてここにいる」

・・・無線交信中・・・・・・立ち見席に余裕あり!

 係「では、どうぞ」

 ロ「え? もう始まってるんですか?」

 係「ええそうです。2時から」

………なんてこったい。


チケットカウンターに案内されて、 

 「千円(税込)です」

 「………は?」

 「千円(税込)です」

や、安いなあ。
(補足:あとで他のお客さんに尋ねたらいつもこんな値段とは限らないらしい)

 係員の指示に従って客席へ。もう演奏中でしょ。静かにしないと…あれ? オケがいない。観客もざわついてるし。もしかしてクラシックって、休憩時間があるの?

 近くで同じように立ち見していた女性に

「すいません、どこまで終わったんですか」

と聞くと 

 「スザートの『ルネサンス舞曲集より』とラフマニノフの『ピアノ協奏曲第2番ハ短調op.18』が終わって、ドヴォルザークの『交響曲第9番「新世界より」』だけ」

あらららら、あと1曲。でも「新世界より」はちょっと知ってるからよかった。

 ちょっとロビーを一回り。喫茶コーナーはすごい人。休憩時間ってそんなに長いのかな。舞い上がっていたため、入ったときにもらい損ねたプログラムをもらう。見るもの聞くもの、すべてが勝手が違うので戸惑いを隠せない。

 ロビーでは「佐渡グッズ」の販売もありました。本(「ぼくはいかにして指揮者になったのか」)と、Tシャツ(本の章扉のイラスト=本人による=をあしらったもの)の二点。

 そうこうしている内に開始のアナウンス。あわてて席に戻る(といっても立ち見)。

 楽団員が出てきてチューニング、そして佐渡さんの登場。会場は大きな拍手。

 演奏内容については初めての経験なのであまり書けないのですが、佐渡さんの指揮は「f」同様、見ていて楽しめました。ご自身の著書でも触れていますが、本当にフットボールの選手が動いているように見えるときもあり、大きな体をフルに使って指揮する姿を堪能させていただきました。

 演奏が終わり、鳴りやまない会場の大きな拍手に佐渡さんは袖から駆け出して台に飛び乗ると、おもむろに指揮棒を振り始めました。かっこいい!!! 「新世界より」よりもぼくはこっちのほうが気に入ったのですが、残念ながらこの曲なんだか知らないんですよねえ。ちょっと短めの曲でしたが。

 周りの観客を見てみると、バリバリのフォーマルウェアを着込んでいる人は意外に少なく、どちらかというとカジュアル系の服装が多いように思いました。とはいっても、さすがにジーンズにセーターはぼくくらいのようでしたが(^^; でもたいして違和感はなかったです(多分)。

 それと、楽章と楽章の間で、みんな思いっきりせき込んだり姿勢を直したりしていましたが、咳はともかく、姿勢はそんなに堅くならんでも音楽に合わせて体を動かしたり足でリズムを取ったりすればいいんではないかと思いました。ぼくは立ち見席なので自然と体の動くままにしていましたが。


 終演後、はじめに確認した楽屋口へ行くと、もう7〜8人の人が来てました。自然と行列ができたのでそれに並ぶと、しばらくして佐渡さんが出てきてサイン会状態になったので驚きました。だって、ポップスのミュージシャンが楽屋口に集まった人にサイン会をしたなんて聞かないじゃないですか。それとも佐渡さんだけなんですか?

 緊張しつつもずうずうしく、佐渡さんに本を出して

 ロ「すいません、名前書いていただけますか、Lorenzoって」

 佐「はいはい」

 ロ「坂本さんのライヴを聴いて、たまらなくなって来ました」

 佐「(サインしながら)あ、うれしいなあ」

 ロ「ネットも見てます」

 佐「あれ(パソコン使うのが)必死なんだよ…(顔を上げて)あれ、ネットに出てない? 見てるよ」

 ロ「よかったー!! 知っててもらえたんだあ!!!(涙目)」

 佐「ロレンツォって、外人かと思った」

 ロ「すいません、初日に『まいど』ってゆっちゃったのぼくです(*注)」

 佐「ああ、教授反省してたよ、喋ること忘れたって」

 ロ「うああああ、ごめんなさいごめんなさい」

 佐「いや、いいのいいの」

(*注)
佐渡さんが出演した坂本龍一のコンサート「f」初日で、坂本氏の「こんばんは」という挨拶に「まいどっ」と大阪ならではの挨拶で応える観客が居たために坂本氏がコケてしまい、その日に喋る予定の殆どを忘れたまま次の曲に行ってしまうという事件が発生(ぉぃぉぃ→自分)。そのことを指している。この録音は「f」オフィシャルサイトで聞くことができる(ただし、古いヴァージョンのReal Audioが必要)。ちなみに、二日目以降は坂本氏がカンペを用意した上に他の会場では「こんばんは」を言ってくれなくなったらしい。

佐渡さんに握手してもらった手は、大きくて分厚い手でした。そしてなによりもぼくみたいにクラシックのことをなんにもわかってない人間にも優しくしてもらえて、とてもとても感激しました。

 佐渡さんが言うように、クラシックのコンサートでもそんなに堅苦しくなくていいんだということが今回わかりました。意外にチケットが安いんだということも。だって立ち見が千円ですよ、千円。ぼくなんかどっちみちいても経っても居られなくなって結局立ってるんだから立ち見で十分(ぉぃぉぃ)。

 これを機会にもっとクラシックを聴きに行こうと思いました。

 それではまた。






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