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古いものが一番上、新しいのが一番下です。

 

TBSのインタビュー準備風景

99/07/30 10:30 kitara

 朝9時半過ぎにkitaraへ到着。が、ゲネプロは予定の10時から10時30分へ変更になっていたらしい。PMF組織委員会で聴講生を担当している大蔵さんにあいさつ。このページを見てくれていたそうで、さっそく今朝アップしたばかりのページをデモする。

 10時過ぎ、入場が許可されたのでホールに入る。二階席からだったが、ステージが近くに見える。既に佐渡さんはステージの上。聴講生に軽く手を上げて挨拶。佐渡さんをTBSのハンディカメラが追う。また「情熱大陸」にでも出るんだろうか?

 ゲネプロの開始は定刻どおり。佐渡さんが指揮台に上ると客電も落ち、本番と同じ風景になる。

 ハイドンの86番では昨日と同じようにティンパニーが多くの指摘を受ける。アシスト役の金聖響氏が客席でバランスをチェックする一方、ティンパニー奏者の後ろでタイミングを指示するが、微妙にタイミングが合わないらしい。難しいもんだ。
 ティンパニー奏者の彼女、第二楽章で出番のないときは金氏のところへ行って何か話していた。「はまってるんじゃないかな」一緒に聴いていたM嬢が言った。なるほど、そうなのかもしれない。あとは本番の2回だけ。彼女はどうするのだろう。

 佐渡さんはしばしば振り向いて、客席の金氏に確認しながらバランスを整えていく。ぼくが以前やっていたPA(*注)という仕事ならもっと簡単にチェックできるのだが、やはりオーケストラともなると本番中に客席に下りてバランスをチェックするわけにもいかない。一方で、中学高校のブラスバンドの練習にも多く立ち会ったことがあるが、ここまで突き詰めたチェックをしているところはあまりない。
 これがプロの仕事というものか。

 「ダフニスとクロエ」では一度とおして演奏した後、冒頭の部分を金氏にタッチ。佐渡さんは客席で音をチェック。振り終わった後、オケのメンバーが足を踏み鳴らして金氏を称える。金氏は照れくさそうに手を振ってステージを降りた。

 個人的には「ディヴェルティメント」で音がにごって聞こえたのが気になった。今日は満席らしいから、本番では人間が吸音してちょうど良くなるのかもしれないが。

 昨日もそうだったが、佐渡さんには余裕が感じられる。オケの仕上がりに自信があるように見えた。

 ゲネプロ終了後、バルコニーでTBSが取材準備しているのを発見。ゲネプロの写真は撮れなかったのでこいつの写真を撮る。

*注:PA … 英和辞典では「放送装置」となっているが、日本では舞台・イヴェントで使用する音響装置、そのオペレータを指すことが多い。ここではオペレータ。

終演後の楽屋口

99/07/31 18:04 kitara・開演前

 実は今までコンサートにはジーンズで行っていたワタシ。自分ではそっちの方が自分に合うと思っていたし、人からもそう言われることが多かったのでフォーマルが多いと言われるクラシックのコンサートでも自分のやりかたを変えなかった、というだけのことなんですけど。あ、あと、佐渡さんが本などで書いている言葉に大いに甘えていたのも理由の一つ。
 で、今日だけは気分を変えてみたかったわけだ(^^; 8年ほど前に買って一度だけ着たスーツがあった。悪くはないが、仕事に着ていける代物ではないのでたんすの肥やしになってたけど、こいつもたまには出番をやろう。靴もセットだから持ってくるのがちょっと面倒だったけど。

 kitaraに着いて聴講生受付でチケットを引き換え。全席指定のコンサートではIDカードと引換券が必要になる。聴講生プログラムに文句はないけど、IDカードだけで入場できるようになればワタシのようにホテルを出ようとして引き返すことはないのだ(自爆)。事務処理の都合やチケット不正取得防止の関係でこうなってるんだと思うけど、引き換えのときIDカードと名簿を照合していたから、チェック方法の改善で出来ないわけではないと思う。

 kitaraの外で例によってVAIOで撮影。それにしても晴れない。札幌に来てからずっと重たい、鉛色の空を見つづけている。こんなんで明日、大丈夫やろか。

 プログラムにアカデミー生の名前と顔写真の入った名簿があった。ここで確認。ティンパニーでチェックを受けていた彼女は Jaime Shapiroで、ぼくが昨日のディヴェルティメントで小さいけど演奏に迫力があると書いたのはジュニア・フェローの石川愛。
 午前中のゲネプロを聴講していたらしい女性二人の会話が耳に入った。
「付き人? ああ振ってた振ってた」
「付き人振ってたよね」
あ、あのなあ。あれは金聖響だっつーの。PMFのプログラムも持ってるし、テレビドラマの指揮指導なんかもやってるんだっつぅの。

 18:15。プレトークが始まった。以下メモから。

  • PMFが始まって10年経った。自分の指揮者としての10年と同じで、感慨深いものがある。
  • タングルウッドでの話
  • 10年前の練習風景のヴィデオを見たが、そこに映る自分はレニー(バーンスタイン)ではなく、小澤征爾に影響を受けていた。
  • 今夜のコンサートは完売したそうだが、10年前のPMFOは1500人だった。しかし、その会場で初めてスタンディングオベーションが起きた公演でもあった。
  • 今日指揮できること、それはレニーが与えてくれたもので感謝している。
  • 今夜の選曲はPMFOの可能性を見てもらうため。
  • この10年の佐渡裕の成長を見てほしい。

 少しの休憩の後、演奏が始まった。ハイドンの交響曲86番ニ長調。Jaimeを見ていたが、なんとなく腕が硬い。ひじが硬いとか手首が硬いのではなくて、全体に硬い。やはり注意深くなっていたのだと思う。しかし演奏そのものはなんの問題もなく、きっちりと決めて見せた。さすが。

 ディヴェルティメント。え〜〜〜〜、シンバルは愛ちゃんじゃないのぉ? あの練習はなんだったんだ(もはやミーハー)。演奏そのものはジャズのビッグバンドを観ているようなグルーヴ感、やたらでかくて、でもバランスのいい音、ああ若いっていいなあ。

 学生席、聴講生も同じ場所だったんですけど「P席」だったんです。オケの後ろ。マエストロを見るにはいい席なんですけど、パーカッションが見えへんやんけっ。こんなんやったらP席いらんわっ(^^;;; って文句ゆうてもしゃあないので別の楽しみを見つけることに。
 ずーっとマエストロを見つめながら曲を口ずさみ、指揮にあわせてスッとブレスを入れる。やってみると結構面白い。
「ああ、指揮者はこおいうことを狙ってるのね」
っていうのが初心者のワタシでも100分の1はわかる(わかったというのか?)。でも曲が佳境に入るとちょっとわかんなくなってしまいました。やっぱ遊びでもある程度暗譜しないとついていけないですね。

 予定していた曲が終わった。良いパフォーマンスをした奏者を佐渡さんが立たせて、他のメンバーが足を踏み鳴らして賞賛する、そんないつもの光景が何度か繰り返された後、観客の拍手が手拍子に変わった。クラシックのコンサートで手拍子は初めての経験だ。他の人はどうなんだろう。それに、アンコールはあるのか? PMFOが札幌の公演でアンコールをやったことはないと、何人もの人から聞いているのだが。
 オケのメンバーが移動し始めた。アンコールはあるらしい。オケの中心、マエストロの前に小太鼓が置かれた。リハーサルでは入れ替わり立ち代り、複数の奏者が練習している。誰がそこに立つんだろう。

 Jaime が出てきた。マエストロが現れた。

 「ボレロ」が始まった――。 ぼくはリハーサルのことを思い出していた。サキソフォン奏者が楽器を左右に振りながらノリの良いソロを吹く。マエストロがそれに対して大きな声で
「Good!」
と叫ぶとオケの他のメンバーは足を踏み鳴らす。他のソロも同じ具合。入りのタイミングを逃してずっこける奏者。それを笑って見ている周囲のメンバー。当然本番でそんなことをやったわけではないが、この雰囲気がPMFOの様子を物語っているのだと思う。
 演奏に身を預けると、自然と体が動いた。一階席から見えたらしく、後で突っ込まれたけど。

 演奏が終わった。マエストロはJaimeと抱き合った。リハーサルから観ていた人々はそこまでにひとつのドラマがあったことを理解したに違いない。

 鳴り止まない拍手。何度目かのアンコールでマエストロはオケを立たせようとしたが、ヴィオラの安積宜輝(あずみ・よしてる)がみんなを座らせた。マエストロが腕を引っ張っても誰も立たない。最後に賞賛を受けたのはマエストロだった。両手を上げて困った表情のマエストロ。しかしオケも観客もみんな、同じ気持ちだったと思う。
 マエストロがコンサートマスターの手を引っ張って袖に下がっていった。ちょっとした笑いが起きて、他のメンバーも続いて下がっていった。

 他の観客が帰り支度をする中、ぼくは客の流れに逆らってステージに駆け寄った。Jaimeが観客の握手攻めに遭っていた。ぼくもそれに加わってなにか言ったような気がするが、興奮していたのでよく覚えていない。
 下に降りた目的は別にある。
「石川さん、ちょっと、ちょっと」
手招きしたが、彼女はなんのことやらわからずビビッてた(^^; しょうがないのでそこから叫んだ
「昨日のリハーサルから観てました。演奏してるのを見て感動しちゃって…がんばってください」
彼女は「ありがとうございます」とチャーミングな微笑を浮かべてくれたが、ビックリしただろうと思う。おれだったら驚く。自分でも、こんなことができてしまったのに驚いた。直前に、「縦笛の会」参加者から「佐渡さんの結婚祝い」として寄せ書きが回ってきたが、「芸風に合わないから」と断ったくらい、こういう言葉は言うのが苦手だったのだ。佐渡さんにもこういうことを言ったことはない。

終演後の楽屋口

99/07/29 21:30 kitara・楽屋口

 楽屋口はファンと出演者でごった返していた。いつもより早かっただろうか、佐渡さんがサイン会をはじめた。疲れているはずなのに、いつもこうしてファンサーヴィスに努めてもらえるのは嬉しい。誰にでもできないことだと思う。
 クラリネットの郡尚恵が出てきた。彼女はこの日の北海道新聞夕刊の一面でPMFに参加する北海道出身者として取り上げられている。
「道新見ましたよ」
と声をかけると、彼女はまだ知らなかった。忙しいから当然だぁな。彼女に新聞を進呈した。

 並んでいるといろんな人がいる。初めて並んだ、という15歳の男の子もいた。近くにサドラー一行がいたが、彼はちょっとびびってたぞ、みんな。もっとも、ぼくもVAIOを振り回していたから人のことは言えないが。彼はTシャツにサインしてもらっていた。
 で、ぼくの番。おみやげを渡すと
「お、とんこつラーメン?」
「それは九州にきたときのおたのしみですー!」(ああおれって何様)
別に恩を着せる気はないですけど、ちょっと珍しいものを持っていこうと思ったら本当に珍しくて小倉と博多のデパートと酒販店を探し回ったというおまけつきの酒です。値段は安いんですけどねえ。
次に、佐渡さんの横へ回り、VAIOを差し出して
「ちょっとそっちの端持ってください。ここんところ(デジカメのレンズ)見てください。んじゃ撮ります
といって撮ったはいいが、礼を言い損ねたような気がする。後の人に気を使って早めに済まそうとしたら一番肝心なことを忘れた。
 申し訳なかった、と思う。


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